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訪日オーストラリア人の消費額はなぜ多い? 余暇意識から読み解く消費動向

インバウンドの活性化により、観光地を中心に飲食費、宿泊費、土産購入費など、訪日観光客の国内消費額は年々増加しています。なかでもオーストラリア人観光客は、(1人当たりの)支出額が他国に比べて高く、平均40万円以上という水準にあります。

なぜ、オーストラリア人は日本でこれほど多く消費するのでしょうか。その理由は、オーストラリアの経済環境や所得水準、日常の消費行動、そして余暇に対する価値観にあります。最新のオーストラリア経済の状況とともに、所得や支出、消費者としての行動を確認していきましょう。

※本記事では1AUD(オーストラリアドル)=100円で換算しています。

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オーストラリア人の収入

平均収入は約2000ドル/週

以下は、オーストラリアでフルタイムで働く人々の1週間の平均収入を、地域別・性別ごとにまとめたグラフです。(2025年5月現在)

(参照:Average Weekly Earnings, Australia, May 2025 | Australian Bureau of Statistics

地域によって多少の差はありますが、だいたい男性で週に2100ドル(約21万円)、女性で1850ドル(約18万5000円)の収入があることになります。これは総年収にすると約104500ドル(約1045万円)相当で、国際的に見ると10番目に高額です。

(参照:Average annual wages | OECD

上のグラフは国際協力開発機構(OECD)による、加盟国全38か国の平均年収(平均賃金)調査です。これによると、全体平均は61146米ドル(1ドル155円換算で約950万円)で、日本は25位、オーストラリアは10位でした。もちろん年収が高い国は物価も高いので、額面だけで経済状態を判断することはできません。しかしインバウンドという観点から見ると、日本よりも所得水準が高く物価も高い国の人々が日本に来た場合、消費に対して「お得」な感情を伴うため購買意欲は増すと考えられます。

収入は年々増加している

オーストラリア人の収入は下のグラフのように、年々増加しています。

(参照:Average Weekly Earnings, Australia, May 2025 | Australian Bureau of Statistics

2015年5月から2025年5月までの10年間で、週当たりの収入は平均約500ドル(約5万円)増加しており、これを年間ベース(52週)に換算すると、年収で約26000ドル(約260万円)相当となります。増加額の大きさに目を見張るのはもちろん、10年にわたり収入が確実に増加し続けている点も着目すべき点も重要で、オーストラリア経済の安定・上昇が見て取れます。

オーストラリア人の消費支出

住宅費・食料費が多い

オーストラリアの人々は普段、収入をどのように使っているのでしょうか。

以下はオーストラリア政府協力のもと、メルボルン大学がオーストラリア居住者を対象に毎年行っているHILDA調査(Household, Income and Labour Dynamics in Australia)の2023年度の結果です。

(参照:HILDA Statistical Report

これによると食料品購入費および住宅ローンの返済費用が目立っており、外食費も入れると食事に使う費用が高額になっていることがわかります。また、アルコール(ビール・ワインなど)が独立した項目として扱われている点から、アルコールの消費量が国全体として多く、日常的に親しまれていることがわかります。

日本とオーストラリアの違い

オーストラリアと日本の消費支出の割合を見てみましょう。

(参照:OECD Data Explorer

日本は食料品や家庭用品購入費など、家計に占める基礎的支出が多くなっています。それに対しオーストラリアは食費が占める割合は日本よりも少ない一方、娯楽費、外食・ホテル宿泊費などは日本より少し高くなっています。日本は日常生活の質を高めるための基礎的支出が、オーストラリアは基礎的支出を抑えつつ余暇への支出が、それぞれ多いことがわかります。一見、両国の消費パターンは似通っているようにも見えますが、心理的な意味づけを考慮に入れると、その消費行動は大きく異なっていることがわかります。

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オーストラリア人と貯蓄

平均貯蓄額は42246ドル

ABS(オーストラリア統計局)、RBA(中央銀行)のデータをもとに金融情報を提供するMoney.comによると、オーストラリア人男性の平均貯蓄額は48464ドル、女性は35839ドル、全体平均では42246ドル(日本円で約420万円)になるそうです。

(参照:Average Savings in Australia by Age, Gender & State in 2025

上のグラフは世代や性別、州別に見たときの貯蓄額です。ベビーブーム世代の貯蓄額が全体の平均を押し上げていること、年収30万ドルほどの世帯の貯蓄額が多いことなどがわかります。

また貯蓄率の変移に着目すると、コロナショックのころに激増しています。これは日常消費が減ったことなどに加え、移動・体験型消費が制限された結果、意図せず貯蓄率が上昇したことによります。

「待機資産」としての貯蓄

オーストラリアは日本より収入が多いのに平均貯蓄額は42246ドル(約420万円)と、想像より高くないことに驚いた人もいるかもしれません。

これは日本とオーストラリアの「貯蓄」に対する意識の差が原因です。

日本は投資が増えてきたとはいえ、まだまだ銀行預金が主流であり、目に見える貯蓄がほとんどです。対してオーストラリアは住宅資産や投資資産を持つ傾向が強く、住宅保有率は約65~67%(2021年)にのぼります。

以下は世代別住宅保有率を示すグラフですが、年齢が上がるにつれ住宅保有率が上がっていることがわかります。さらに1992年~1996年に生まれた世代でも40%以上が住宅を保有しており、オーストラリアの人々が住宅を資産と考え、若いうちから貯蓄・運用していることが見て取れます。

(参照:Home ownership and housing tenure – Australian Institute of Health and Welfare

では老後の資金については、どう運用しているのでしょうか。

オーストラリアには公的年金のほか、Superannuationという確定拠出年金のような制度があります。これは強制的に年金口座に積み立てられ、原則として自由に引き出すことができない資金で、日本の財形貯蓄のような任意の貯蓄制度ではなく、強制的な積立・運用型年金制度です。この制度により給与の11%前後が積み立てられ、老後の収入の主軸となるように設定されているのです。

そのためオーストラリアの人々は普段から老後の資金を懸念する必要がなく、日本ほど老後資金を意識する必要がない状況にあります。オーストラリア人にとっての銀行預金は「待機資金」となり、そのため銀行への貯蓄額が“少なく感じる”状態なのです。

余暇に対する消費行動

余暇は「人生を構成する基本要素」

NIRAのレポートによると、オーストラリアでは積極的に休暇を取ることが一般的なため、労働と余暇のバランスが国民生活に深く組み込まれています。そのため余暇に対する意識も高く、余暇=「空いた時間」ではなく、余暇=「人生を構成する基本要素」と捉えられています。余暇に対する出費は「消費」ではなく「自己充足のための社会的な時間」、休んだ時間は「怠け」ではなく「心身回復のための健康管理」と位置づけられているのです。

*セルフケア:自分自身の体調管理のことで、睡眠・食事を含む

(参照:How Australians use their time, 2024 | Australian Bureau of Statistics

オーストラリア統計局のデータによると、約93%の人が余暇活動を意識的に行っており、1日5時間以上の自由時間をつくっているようです。それほど余暇活動を重要視しているということに他ならないでしょう。

余暇への消費は「人生の投資」

一般に日本では価格に対する感度が高く、無駄な支出を避け、「消費は貯金を減らすもの」と意識する傾向があります。一方でオーストラリア人はスポーツやアウトドア、旅行が日常の中にあるため「無意味な消費は良くないが、価値ある消費はむしろ善」「消費は人生の投資」と捉えています。経験や健康に対する出費はたとえ失敗したとしても浪費ではなく、それも生活を豊かにするための大切な経過なのです。それほど、オーストラリアの人々は余暇に重きを置いていることがわかります。

オーストラリア人の旅行に対する消費動向

国内旅行消費総額は年間約17兆円

オーストラリア人にとって、週末やホリデーを利用した国内旅行は余暇の過ごし方として非常に一般的です。下の表・グラフは2025年7月~9月の3か月間での国内旅行回数(のべ回数)および支出額などを示しています。

(参照:Domestic tourism statistics results | Tourism Research Australia

これらのデータによると、3か月の間の合計旅行回数はのべ2700万回、支出総額は2兆5414億円にのぼります。

オーストラリア国民数が2720万人であるのに対し宿泊数がのべ8940万泊であることを踏まえると、3か月ごとに1人当たり3泊ほど宿泊している計算になります。(もちろん同じ人が複数回旅行に行く場合もあります)

さらにこれらの旅行では、1人あたり1日約284ドル(28400円)、旅行全体の合計で941ドル(94100円)分の消費をしていることがわかりました。

日本人における、1人あたりの国内旅行支出は約47800円。オーストラリア人は日本人の約2倍であることがわかります。(参照:2025年(1月〜12月)旅行トレンド見通し|ニュースルーム|JTBグループサイト

オーストラリアの国内旅行消費総額は年間1688億ドル(約17兆円/2024年-2025年)であり、いかに旅行が人々の身近にあるかがわかるかと思います。

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海外旅行は1人あたり約75万円の支出

国内旅行ほど頻繁には行けませんが、海外旅行も人気です。以下はオーストラリア人の海外旅行総消費額の移り変わりで、2024-2025年度には8兆円を超えていることがわかります。

(参照:Tourism Satellite Account, 2024-25 financial year | Australian Bureau of Statistics

データによると、2024-2025年にはオーストラリア全体でのべ1150万回の海外旅行が記録されており、同年の海外旅行総消費額8兆4000億円を割ると、1回あたりの平均支出は約70〜75万円になります。この中には欧米や世界一周旅行なども含まれるため、一概に平均値で判断することはできませんが、とはいえこの金額を見ると、日本旅行での消費額が約40万円という数字は、オーストラリアからの航空券代を加味したとしても、少ないほうと言えるのかもしれません。

また、JTBの調査によると、海外旅行における日本人1人あたりの平均支出は約33万4千円。海外旅行においても、オーストラリア人の支出は日本人の2倍以上になることがわかりました。

オーストラリア人の旅行意識

国内旅行・海外旅行ともに日本人よりも約2倍以上の旅行支出があるオーストラリア人ですが、この差は主に、オーストラリア人の旅行スタイルが要因です。彼らは長期滞在を好むため、宿泊・交通費が高くなる傾向があります。また過ごし方についても現地ツアーや様々な体験に積極的に参加したり、アクティビティを楽しんだりと、そこでしか得られないものを存分に味わっています。「余暇への消費は人生の投資」という言葉通り、自己実現や価値の獲得を目的とした「意味ある支出」が、消費を底上げしているのだと考えられます。

こうした消費への動きは、多様な文化を持つ日本に対して非常に有効です。観光庁の調査によると、オーストラリア人は訪問回数を重ねるごとに「自然・景勝地観光」「四季の体感」を求める人が増えており、オーストラリアで過ごすのと同じような旅を選択していることがわかります。それこそがオーストラリア人の余暇の過ごし方であり、有益な支出だと考えているのでしょう。

まとめ

オーストラリアの経済事情や、人々の余暇に対する意識について、ご理解いただけましたでしょうか。こうしたオーストラリア人の消費動向は、日本との相性が良いことはもちろん、テーマ性を重視するSIT観光(スペシャルインタレストツアー)との親和性が高いと考えられます。工夫次第でより多くの訪日客を呼び込むことが可能になるでしょう。

訪日観光客の背景を知ることで、より的確なマーケティング戦略を練ることができます。目的や内容に合わせた、より詳しい分析も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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